暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

2019年秋アニメ感想①【PSYCHO-PASS サイコパス3】

 皆様、あけましておめでとうございます。いーちゃんです。昨年は当ブログを読んでくださり、ありがとうございました。今年も頑張って更新していきますので、何卒、よろしくお願いいたします。新年1本目はこちらです。

 

 

 

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 2012年より始まった近未来SFアニメ。ノイタミナ枠ということで、私はTVアニメ1期から視聴しており、シリーズは最近の劇場版3作を除いて全て見ています。というわけなので本作も見ない理由はなく、視聴した次第です。

 

 本シリーズの肝はシビュラシステムです。このシステムは「個人の心理状態を数値化できる」もので、これにより犯罪を未然に防ぐことができるようになり、平和が保たれているというものです。現代でも凶悪犯罪が起こるたびにこのようなシステムを開発しろという声が上がりますが、本シリーズには、「もしそれを実現したらどうなるか?」という、一種思考実験的な要素があります。TVアニメ第1期はこのシステムに引っ掛からない槙島聖護という存在とシステムに従属する公安1係の刑事が対峙することで、「権利集中の管理社会の中で人間はどう生きていくのか」みたいなテーマを描いていたと思います。後は刑事アクションものとしても中々面白かった記憶があります。続く第2期ではスタッフが入れ替わった影響か話のクオリティがだいぶ落ち、正直言って詰まらなかった記憶があります。ただ、朱が最終的に人間に希望を託して終わるなど、1期の頃にあったテーマをもう少し深掘りしていました。

 

 そして本作ではどうやってストーリーを進めていくのかと思えば、何とシリーズを通しての主役だった朱を監禁させ、主役を2人新しく据え、シビュラシステムとはまた違ったボス、ビフロストなる機関を置くという方法をとってきました。このビフロストはシビュラとは違う意味で世の中をコントロールしている存在で、世界をゲームのように操っています。私はこの描写には現代的なものを感じました。というのも、彼らがやっていることはそのまま今の政治や経済界あたりがやっていることと同じだと思います。経済は一部の大株主の投資や利益のために回り、そして政治は利権のために行われる。そして下々の我々にはその恩恵は回ってこず、寧ろ本作の中の犯罪者よろしく駒として使われるだけです。こういった姿にビフロストは重なって見えました。こちらはあくまで比喩表現としてですけど。第2話なんて意図的にリーマン・ショックを起こさせているわけですし。

 

 そしてそれは、シビュラ的な管理社会と比較され、提示されます。つまり、「完全な管理社会がいいのか、操られている社会がいいのか」という極論です。本作はこの2つの極論を提示することで、シリーズのテーマである「管理、支配体制下の社会の中で人はどう生きるか」ということを語ろうとしているのではないかと思いました。

 

 また、同じくメインで語られているのは、現実でも問題になっている難民問題。現実では排外的な動きが出ていることを考えれば、負の感情を数値化できる本シリーズでこの問題を扱うことは思考実験として意義があると思いますが、如何せん本筋との食い合わせが若干悪かったですね。

 

 さらに、クライム・サスペンスとして。捜査に関しては灼のメンタルトレースが便利すぎって意見は分からなくもないですが、一応デメリットもあるので許容範囲でした。シビュラの目をかいくぐるためのトリックについても、2期でシビュラがあれだけ醜態をさらしていたので気にならず、寧ろ「なるほどなぁ」と思ってましたし、ビフロストの存在について全く関知していないあたりも上述の理由で気にならず。この点を「脚本の穴」とする意見もありますが、そもそもこのシリーズには免罪体質者(200万人に1人は多すぎ)という巨大な穴があるわけですし、そこまで気にならず。

 

 その他には、シリーズ恒例のOPとアクション作画は素晴らしく、見応えが十分なものでした。

 

 ただ、全8話、普通のTVアニメで16話もかけたのに結局劇場版の前振りにしかなっていないのは大きなマイナス。せめて物語はある程度は終わらせてほしかったです。本当に何もかもぶん投げているので、その商法に辟易してしまいます。正直、本作の真相も気になると言えばなりますが、映画を観るまででもないよなぁ、というのが本作に対する私の評価を表していると思います。