82点
北条司先生原作で、80年代の週刊少年ジャンプを代表する漫画、「シティーハンター」。まさかの実写化作品。遥か昔にジャッキー・チェンが後藤久美子と共に出演した作品がありましたが、それとは全く関係がない作品です。制作国はフランスで、監督・主演は『世界の果てまでヒャッハー!』のフィリップ・ラショー。以前よりそのビジュアルの再現度の高さから噂になっていた作品で、私もイチ「シティーハンター」ファンとして怖いもの見たさで鑑賞しました。
鑑賞してみて驚きました。予想をはるかに上回るレベルで「シティーハンター」でした。ビジュアルの再現度の高さだけではありません。作品全体の雰囲気が「シティーハンター」なのです。しかも本作が素晴らしいのはそれだけではなく、1本の「フランス製娯楽コメディ映画」としても申し分ない面白さであるという点です。
漫画、アニメの実写化において、最も難しい点は、二次元の存在をどのように三次元に落とし込むのかということです。これが失敗すると「学芸会」と言われます。また、作品全体のノリも実写とは違う自由なものであるため、これの再現についても難しさがあります。また、世界観の問題もあります。昨今はCGが発達してきたとはいえ、日本のそれはまだまだな点が多く、どこかチープな感じが漂ってしまいます。ちなみに、このチープ感を逆手にとってファンから受け入れられたのが『銀魂』だと思っています。
本作では、この「二次元から三次元」への置き換えがとても良くできています。ビジュアル面ではリョウのトレードマークである腕まくりジャケット(ラストで「シティーハンター3」仕様になっているというファンサービスあり)、ミニクーパー、伝言板、コルト・パイソン、BGM、海坊主、等々が完璧に再現されています。三次元では難しい100tハンマーやカラスなどはきちんと妄想の中で処理しています。唯一舞台が新宿でないという問題はありますが、観ているとあまり気にはなりません。
何故かというと、本作は表面的な再現以上に、内面の再現が完璧だから。「シティーハンター」という作品の骨子をきちんと捉えています。ストーリーは依頼人から依頼を受けたリョウと香が敵対する組織と何やかんやあって最後には解決するっていつものパターンですし、その中にある「リョウと香の関係」にもきちんとフィーチャーしています。リョウの気持ちが分かる下りも直接ではなくあくまで間接的である点もツボを完ぺきに抑えているなと思いました。そしてそこから2人の追いかけっこが始まって止めて、引く!からの「Get Wild」の最強コンボです。
劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ> -VOCAL COLLECTION-(期間生産限定盤)
- アーティスト:CITY HUNTER
- 出版社/メーカー: アニプレックス
- 発売日: 2019/02/06
- メディア: CD
それ故に他の映画オリジナルの要素にも違和感が生まれません。本作ではギャグ要素は結構監督や、フランスのおバカ映画的な味が入っていると思いましたが(どれも下らなくて最高)、気にせず楽しむことができました。アクションにも力が入っており、普通に1本の「映画」としても楽しむことができます。
そして何より、最も感心したのが、北条先生も絶賛している「リョウが男に惚れる」というストーリー。リョウの存在意義を無理やり奪い取るもので、気のせいかもしれませんが、昨今のポリコレに対する自然な配慮になっていた、のか?さらにこの手の話は原作、アニメではやっていないので新鮮味もあります。
以上のように、監督の原作への愛が炸裂し、かなりしっかりと「映画」になっているという、実写化のお手本のような作品でした。他の実写化作品も、本作を見習ってほしいと切に願います。
今年の2月に公開された20年ぶりの映画。
フランス映画。是枝監督の作品。