暇人の感想日記

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彼の怒りは、遂に世界へ向けられる【ジョン・ウィック:パラベラム】感想

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89点

 

 

 引退した殺し屋が、激情にかられてあらゆる敵を倒していく痛快シリーズ、『ジョン・ウィック』。1作目は単なる「ナメてた相手が殺人マシーンでした」映画であった本作ですが、2作目から急激にフィクションラインが上がり、ジョン・ウィックが所属している裏組織が前面に押し出されて、独特の世界観を持ったシリーズへと変貌を遂げました。私は過去2作は映画館では観ていないのですが、観てはいて、今回は初めて映画館で鑑賞した次第です。ちなみにその際、キルカウンター欲しさに買ったムビチケの存在を忘れて、クーポンで観てしまうという失態を犯してしまったため、都合2回映画館で観ました。

 

 1作目は上述の通り、「ナメてた相手が殺人マシーンでした」映画でした。そして2作目は、ジョンの所属する暗殺組織を前面に押し出し、ジョンの「反撃」を描いていました。3作目となる本作は、言うなれば「逃走」です。前2作では能動的に相手を殺しにかかっていたジョンですが、本作では逆に追われる立場になります。そのせいか、舞台はよく変わり、そこでの戦い方も多種多様になっています。故に、前2作と比べるとやや戦う理由が弱い面はありますが、アクションシーンの進歩ぶりが素晴らしく、2回観ても問題ないくらいには楽しめました。

 

 

 本作が前2作と違う点は大きく2つあると思っています。1つは上述の通り、ジョンが前2作とは正反対に「追われる立場」になっていること。2つ目はアクションシーンです。

 

 まず1つ目についてですが、前2作では限定的な舞台でジョンが無双しまくるという内容でしたが、本作では追われる立場という設定上、世界各国を旅します。そこで数少ない自分が頼れる人を頼り、逃走するのです。この展開により、ジョンの戦い方が、その場にあるものを駆使して戦うというジェイソン・ボーン的なものになっていたりして、その工夫がとても楽しいものになっています。そして超どうでもいいのですが、砂漠のシーンでは『MASTERキートン』を思い出しました。

 

 しかし、これによって、1つ問題が生じているとも思います。それは、ジョンの「戦う理由」が弱く見えてしまうということ。前2作では、ジョンは大切なものを失い、激情にかられて復讐を行います。しかし、本作ではジョンは終始逃げていて、向かってくる敵を返り討ちにするだけです。これには少し、熱量の不足を感じてしまいました。

 

 ただ、この「戦う理由の希薄さ」については、最後まで観ると合点がいきます。本作はつまり、次作へのブリッジ的作品だったのだということが。ジョンは本作の戦いで、コンチネンタルの支配人、ウィンストンに裏切られ(?)、遂に世界そのものから抹消されます。ラストが示す通り、彼の怒りが世界へ向けられます。つまり本作は、ジョンの怒りが、あの世界そのものへ向かうまでの序章だったのです。だから次作は相当スケールの大きい復讐劇になるのではないかと思われます。そうだよね?

 

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 2つ目のアクションシーンについて。前2作の時点で、ガン・フーという戦術を確立していたジョンですが、本作では銃だけではなく、本、馬、刀、そして『悪女』オマージュのバイクチェイスなど、多種多様な戦法を見せてくれます。それら1つ1つが観ていてとても面白い。さらに本作では、アクションのときにカットを割ったりせず、割と長回しで撮られています。それ故に前2作までにあったスタイリッシュさは薄れてしまい、泥臭さが際立ったものの、監督が意図したライブ感は強くなりました。そのため、前2作とは違ったアクションが楽しめます。確かに、よりバカッぽくはなりましたが。

 

 アクションシーンは泥臭く、しかし創意工夫に富んだ愉快なものになり、全てを失くしたジョンはラストで世界への怒りを表明します。どん底まで堕ちた彼が次作でどのような「復讐」を見せてくれるのか。凄いものだ出てきそうで楽しみにしています。

 

 

本作がメチャクチャ意識した映画。

inosuken.hatenablog.com

 

 シリーズ1作目。

inosuken.hatenablog.com

 

 シリーズ2作目。

inosuken.hatenablog.com