暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

2019年春アニメ感想④【キャロル&チューズデイ】

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 人間がその生活の場を火星にまで伸ばした未来。難民の子、キャロルと、政治家の娘、チューズデイ。彼女らが出会い、音楽を通して絆を深め、成功していく様を描いた作品です。総監督は「カウボーイ・ビバップ」「スペース・ダンディ」等、名作を生み出してきたの渡辺信一郎。音楽にこだわることで有名な彼ですが、今回は遂に、音楽そのものをテーマにした作品を送り出してきました。しかもNetflixと組んで世界に同時配信されます。1ファンである私としては、好きな監督が、Netflixと組み、世界に挑む作品ということで期待値は上がりまくりでした。

 

 しかし、実際に視聴してみると、どこかしっくり来ないというか、イマイチな印象を抱いてしまいました。詰まらなくはないのです。どちらかと言えば面白い。例えるならば、「最高級の食材を使って作ったという料理を食べてみたら、そこら辺のファミレスと味がそんなに変わらなかった」という感じなのです。

 

COWBOY BEBOP Blu-ray BOX (通常版)

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 まず、本作については、音楽は素晴らしかったです。私は音楽には詳しくないのですが、どうも世界でもトップレベルの歌手を起用している模様。なので、ムダに下駄を履かせなくていいのです。本当に素晴らしいのだから。

 

 さらに、「AIが曲を作っている」時代に設定することで、自分たちで曲を作るキャロルとチューズデイ達の「想いを曲に込める」点を強調したりしていました。その対比がアンジェラで、彼女が「自分自身」を取り戻して歌うということが彼女の物語の結末でした。

 

 ただ、肝心要のストーリーがイマイチだと感じました。本作は24話の中で、大きく2部に別れています。キャロルとチューズデイが出会い、絆を深め、デビューするまでの第1部。そして、ガスが毎回冒頭に述べる「奇跡の7分間」に至る第2部です。

 

 イマイチなのは第1部です。1話は素晴らしい出来でした。正反対のキャロルとチューズデイが出会い、これから彼女達の物語が始まるという期待に満ちていました。しかし、それ以降が問題で、ひたすらにグダグダな話が続きます。キャラ紹介も兼ねているのでしょうが、全体から考えると「これいる?」って話が多い。しかもそのくせ、7話くらいからデビューへの道を(割とアッサリと)見つけ、デビューしてしまうのだから余計にそれまでの話が茶番に思えてきます。また、この前半は、2人にとっての壁が「知名度」しかないのも問題だなぁと。

 

 そして、後半は2人が音楽業界で上り詰めるのかと思っていたらそんなことはなく、前半とは違い、急に政治的な要素が濃くなってきます。そして最終的に「音楽が持つ力」の話になるのです。これ事態は今のトランプとか排外的な動きに対するカウンターであり、それを音楽でやろうというのは、要はWe are the worldな訳ですが、それはそれで良い。ただ何というか、前半とやってきたことと解離している気がして、「とってつけた感」が凄いんですよね。一応、キャロルとチューズデイには色々と起こりますが、別にそれが表現に結び付くわけでもないし・・・。

 

TVアニメ「キャロル&チューズデイ」VOCAL COLLECTION Vol.1

TVアニメ「キャロル&チューズデイ」VOCAL COLLECTION Vol.1

 

 

 でも、ラストの「奇跡の7分間」は、トップレベルの歌手を起用し、本当に世界に同時配信して最後に「これからはあなたの物語です」と示すというメタ的な構造になっているわけです。ここには本当に「音楽で世界が変わると良いな」と思ってることが伝わってきて、少しグッときました。とはいえ、これで帳消しにはなりませんけど。

 

 このように、私は色々と気になってしまってそこまで楽しむことができませんでした。ただ、これは過度に期待しすぎたからだと思います。要は「俺の想像と違う!」ってやつですね。素材は良かっただけに、本当に惜しいなぁと思います。