暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

今年最高のおバカ映画、爆誕!!【映画 この素晴らしい世界に祝福を! 紅伝説】感想

f:id:inosuken:20190929132254j:plain

 

80点

 

 

 暁なつめ先生原作による、「小説家になろう」発のライトノベル、「この素晴らしい世界に祝福を!」の劇場アニメ作品。私は2016年、17年に放映されたTVアニメは見ており、「嫌いじゃない」と言えるくらいには好きなのでわざわざムビチケまで買って鑑賞した次第です。

 

 本作は、ジャンルとしては異世界転生モノが該当します。「なろう発の異世界転生モノ」と聞けば、「俺TUEEE」系と言われる、現実世界では平々凡々な主人公が異世界でチート能力(ちから)を手に入れ、それを以て無双し、周囲のヒロインたちにモテまくるというありがちなものを連想します。主人公の佐藤カズマは、現実では引きこもりの高校生でしたが、ある日交通事故(笑)に遭い、心臓麻痺で死んでしまいます。そこで女神を自称するアクアに出会い、異世界に転生し、めぐみん、ダグネスといった仲間と出会い、魔王討伐に邁進します。

 

 と、ここまで見ていくと、典型的な異世界転生モノのそれです。しかし本作は、そういった「なろう系」のお約束を茶化し、パロディ化しているギャグ作品なのです。カズマはチート能力を手に入れられるかと思いきや一時の感情でアクアを道連れにし、運以外は平凡と言われます。そして(一応の)ヒロインであるアクアはアホの子であり、自分勝手でトラブルを引き起こす厄介者だし、上級職のめぐみんは1回しか使えない爆裂魔法しか使えないポンコツで、ダグネスは騎士のくせに攻撃は当たらないドМの変態という、「定番」を茶化した奴らばかりです。しかも、冒険に出ようにも金が無いのではじまりの街でずっと金稼ぎをしている始末。しかも出てくるモブはどいつもこいつも日和見主義の俗物ばかり。本作は、こんな奴らが繰り広げるドタバタギャグを描いた異世界日常系作品なのです。

 

 

 そんな作品の劇場版である本作ですが、TVシリーズの良さを盛り込みつつ、劇場版用に絶妙にチューニングされた、最高のおバカ映画でした。全編90分ある本編のうち、前半は基本ギャグです。それはTVシリーズのそれと同じものが延々と繰り広げられます。TVアニメの30分枠で繰り広げられるのならまだテンポも良くて見ていられたのですが、それが映画館で延々繰り広げられると、少し食傷気味になったりはしました。しかし、スタッフもそれを分かっていたのか、そのギャグを劇場版レベルまで上げている箇所がちょいちょい見受けられました。元々TVシリーズから動く箇所は妙に動く作品だったのですが、本作ではそれがさらに顕著になり、若干オーバースペック気味な感じすら受けました。

 

 ただ、このギャグですが、今のポリコレ的な風潮の中では、結構ヤバめな内容があることも事実です。夜這いするかどうかカスマさんが悩んでいるときですが、いくら親の了承があるとはいえ、同意も無くめぐみんを襲うかどうか躊躇するのは、いくらギャグでもヤバいだろと。まぁ、一応その後に恒例の女性キャラからの罵詈雑言が待っているのですが、あそこまでがギャグですからね。こういうギャグを扱っている作品が受けているという現象から考えるに、やっぱり日本って、ガラパゴスなんだなぁと思ったりしました。

 

『映画 この素晴らしい世界に祝福を! 紅伝説』テーマソング 「1ミリ Symphony」

『映画 この素晴らしい世界に祝福を! 紅伝説』テーマソング 「1ミリ Symphony」

 

 

 しかし、本作の素晴らしいというか、スタッフの意気込みを感じる点は、本作を単なる「ファン向けのボーナス作品」に終わらせず、1本の「映画」として成立させようとしていることです。上述のオーバースペックな作画もそうですが、レギュラー全員登場のお祭り感とか、終盤の大迫力な演出、そして岩浪義和さんも力を入れたという音響は素晴らしかったです。あのシーンはぜひ劇場で観てほしいと思います。

 

 そして、何より、映画の冒頭とラストを対比させ、きちんと1つのテーマを語っている点。それはめぐみんの爆裂魔法の肯定です。冒頭とラストで爆裂魔法を炸裂させ、それに対するカズマの対応の変化で語っているのです。そう考えると、散々ギャグとして消化されてきたあの名乗りも自身の肯定に感じられ、少し心動くという不思議。そしてこれは、TVの続篇としてもきちんと機能していて、この肯定が、「この素晴らしい世界に祝福を!」という、異世界転生モノのパロディ作品の肯定にも繋がると思うのです。この辺は文句なしです。

 

 このように、1本の映画として、めぐみんの成長を描き、そして尚且つ、TVアニメ作品の続篇としても素晴らしいものだと思います。

 

 

なろう発アニメ。

inosuken.hatenablog.com

 

 深夜アニメの劇場版

inosuken.hatenablog.com