暇人の感想日記

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人生肯定映画。自分も最後はこうありたいなぁ【さらば愛しきアウトロー】感想

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75点

 

 

 ロバート・レッドフォードには、直撃世代ではないためかそこまで思い入れはなく、観たのは『明日に向かって撃て!』とか『スティング』とか『大統領の陰謀』とか『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』といった最近の作品か、超有名作品のみ。そんな私ですが、映画史にその名を刻んだ名優の引退作と言われたからには鑑賞しないわけにはいかず、今回、鑑賞しました。

 

 彼が俳優引退作として選んだのは、実在の銀行強盗犯、フォレスト・タッカーの実話。1920年に生まれ、15歳で初めての犯罪を犯してから65年もの間、強盗、逮捕、脱獄(何と16回!)を繰り返してきた生粋のアウトローです。本作はそんな彼の晩年、74歳の頃を中心に描きます。

 

 

 強盗犯である彼ですが、その手口は実に「紳士的」。誰も傷つけず、金だけを盗み出す。被害に遭った人々は口を揃えて彼を「紳士だった」と称賛し、女すらも虜にする。そんな「漫画!?」と思わざるを得ないような人物ですが、本当にいたのだから仕方がない。

 

 そんなタッカーの姿は、レッドフォード自身と重なる部分がかなり多い。レッドフォードは時代性もあるのでしょうが、ブレイクしたのは『明日に向かって撃て!』や『スティング』のようなアウトロー役がきっかけでした。そして、映画の中では、多くの女優とのロマンスを見せてきました。タッカーは、そんなレッドフォードそのものと言える存在として描かれています。

 

 また、レッドフォード引退作ということで、彼の出演作へのオマージュも相当ある模様。そもそも本作自体が西部劇であり、レッドフォードのブレイクのきっかけとなったのが『明日に向かって撃て!』だったことを考えると、最後の出演作として、これほど適したジャンルはありません。まぁ、オマージュについては私は上述のように鑑賞本数が少ないので『スティング』くらいしか分かりませんでしたが、パンフレットを読むともっと多くのオマージュがあるそうです。このように、主演から何からレッドフォード一色なのが、本作なのです。

 

さらば愛しきアウトロー

さらば愛しきアウトロー

 

 

 また、本作には、「若手代表」みたいな感じでケイシー・アフレックが出てくるのですが、彼は仕事に疲れている時、自由に生きているタッカーを見て魅了され、彼を追い詰めていきます。その過程は、さながらレッドフォード自身が若手に対して道筋を示している姿にも重なります(実際、彼はサンダンス映画祭というインディペンデント作品を表彰する映画祭を開いている)。

 

 ラスト、逮捕されたレッドフォードは刑期を終え、安住の地を得ます。終盤で映される、レッドフォードの過去作からの引用を含んだこれまでの「脱獄」のモンタージュにより、これまで彼がしてきたことを一気に見せられ、それがレッドフォードのこれまでのキャリアと重なって映ります。これもあり、安住の地を得るのは、「引退」ということを考えれば、とてもいい幕引きです。『運び屋』でもイーストウッドはフッといなくなっていましたし。しかし、だからこそ、最後の最後の行動で、グッとくるわけです。地平線の向こう側を見つめ、もう一度、強盗をする。タッカーもそうしたそうです。「まだまだ俺はやるぜ」そう、レッドフォードが宣言している気がして、鑑賞後は私も彼のことが好きになってしまっていました。さすがですよ。

 

 

同じく、「高齢の犯罪者」の実話。

inosuken.hatenablog.com

 

 このブログでレッドフォード主演作はこれだけ。

inosuken.hatenablog.com