暇人の感想日記

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静かだけど、情熱的な映画【COLD WAR あの歌、2つの心】感想

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75点

 

 

 初ポーランド映画。鑑賞理由は簡単で、本作がアカデミー賞外国語映画部門にノミネートされたから。公開規模的にすぐに終わってしまいそうな気配だったので、公開後、すぐに鑑賞してきました。だから1カ月越の感想になります。受賞歴、ポーランド映画、白黒ということから、さぞ通好みの映画なのだろうと思い、気合を入れて鑑賞してみました。

 

 しかし、鑑賞してみれば、本作はあまりにもストレートな男女の愛の物語であり、静かながら、非常にしっかりとした、力強い作品だと感じました。

 

 本作は上記のように、男女の愛の物語です。冷戦時代、ソ連支配下だったポーランドという激動の舞台で運命的に惹かれあった2人を描いています。こう書くと、いくらでもドラマチックな展開にできると思います。実際、劇中ではドラマチックな展開は起こっているのですが、それは画面には映されません。徹底して排除されています。その合間合間は、我々が想像で補うしかありません。パンフレットで、監督のパヴェウ・パヴリコフスキは伝記映画が嫌いだと明かし、この省略方法に辿り着いたと語っています。これには、監督がドキュメンタリー出身というキャリアが関係している気がしていて、そう考えると、本作の徹底された傍観視点も納得です。

 

 そこで、映画を纏めているのが音楽です。私には正直分からないのですが、パンフレットによれば、本作は現実世界のポーランドの音楽の歴史ともリンクする部分があるらしいです。その代表的なものが「オヨヨーイ」という、おそらく1度耳にしたら中々忘れることができない歌「2つの心」。劇中では、この歌によって、2人の関係性、感情が示されています。

 

Cold War (Original Motion Picture Soundtrack)

Cold War (Original Motion Picture Soundtrack)

 

 

 「男女の物語」としても結構面白いと考えていて、最初こそ、女性が男性を追いかけていたわけですが、中盤からその関係性が逆転して、「男が女を追う」構図に女性側が仕組むわけですね。そして男がその覚悟を示したら、2人は結ばれるわけですね。

 

 ただ、この2人、観ていると分かる通り、くっついたり離れたりしているわけです。それは冷戦下という激動の時代性にも原因はあるのでしょうが、本編中では、2人に安息の場所はありません。だからこそ、ラストで2人が画面の「外」に出て、風がサーッと吹いて草を揺らした瞬間、映画的に素晴らしいその瞬間に静かな感動があるわけです。静かながらも、非常に情熱的な映画でした。

 

 

同じく、アカデミー賞外国語映画賞を争った作品。こっちも白黒。

inosuken.hatenablog.com

 

 同じく、アカデミー賞外国語映画賞を争った作品。

inosuken.hatenablog.com