暇人の感想日記

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言いたいことはあるけど、姿勢は大いに買います【新聞記者】感想

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60点

 

 

 ジャーナリスト、望月衣塑子さんの著作「新聞記者」を原案とした社会派映画。日本映画というのは政治的な映画が非常に少なく(この辺に関してはちょっと言いたいことがある)、お隣の韓国やハリウッド等が政治的な内容をエンタメに上手く落とし込んでいる映画が多いのとよく比較されています。そんな中公開されたのが本作。原案が原案なので現政権を批判的に描いた作品になる事は明白であり、公開前、そして公開後もその界隈では話題沸騰中の作品。私もね、そりゃ今の政権には大変ゲンナリしていて早く引きずりおろしたいと思っているので、その手の内容は楽しめるのではないかと思いました、しかも、監督は『青の帰り道』を撮った藤井道人さん。同作は非常に良い映画だったので、期待値は倍増しておりました。

 

 鑑賞してみると、基本的には面白かったのですが、言いたいこともある作品でした。この点をこれから書いてみます。

 

新聞記者 (角川新書)

新聞記者 (角川新書)

 

 

 本作の基本的なストーリーは、帰国子女の新聞記者、吉岡(ジム・ウンギョン)が、若手官僚である杉原(松坂桃李)とともに大学新設計計画の告発(加計学園森友学園)をもとに調査を進めるというサスペンス。本作はあくまでフィクションなので、現実で起こった事件をもとにしているだけです。しかし、劇中で挟まれる映像は実際に使われたものを放送しており、「フィクションだけど、これは現実とも地続きですよ」と示しています。他にも、山口敬之さんの昏睡レイプ事件を基にした記者会見や、それに伴う無自覚なクソ男どもの発言とか、SNS上のどうしようもないヘイトなど、日本の暗澹たる部分を見せている下りはとても良かったです。この日本の息苦しさを描くという点は、『青の帰り道』を彷彿とさせる感じもあります。

 

 ただ、内調の描き方は少し露骨すぎるかなと思いました。ドキュメンタリーチックに動くカメラと、生活感のある美術で撮られた新聞社側に対し、内調は動きの少ないカメラで、室内を暗闇にして、人間味が無いように撮られています。今時その撮り方はどうなんだとは思いましたが、敵味方をハッキリさせるためなのかなぁと。

 

青の帰り道 [Blu-ray]

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 タイトルは「新聞記者」であり、主人公もそうです。しかし、本作の真の主人公と言える存在は、杉原です。彼は尊敬する上司の死をきっかけにして政府に対し疑問を持ち、吉岡の調査に協力します。彼が官僚になったのは「国民のため」でした。それがいつしか国家の都合のいいように動かされている。杉原はここに疑問を持ち、葛藤を乗り越えるのです。そのキッカケとなったのが出産であり、「未来の子供たちのため」という動機が見えます。おそらく、劇中で制作者が問いかけたかったのはこの点ではないかと思います。「子供たちのため、この国の未来のため、立ち上がるのは今だ」と。杉原の姿は、その象徴です。だからこそ、ラストはあんな終わり方だったのかなと。つまり、ここからは、あなた次第だよという。

 

 こういったメッセージはとても良いです。そしてそれをエンタメ作品でやることも。ただ、最後の「陰謀」の真相で一気にフィクションラインが上がった感があって、急に「相棒」みたいになったなと思いました。というより、余談ですが、本作の公開に際して、私、『相棒』シリーズの事を忘れないであげてほしいなと思っております。映画の出来はどうあれ、あのシリーズも社会派として、結構頑張っている方だと思うんですけどね。

 

 

 このように、不満もありますが、ストレートに政権批判する姿勢は買いたいのでこの点数とします。

 

 最近は、「マスコミは信用できない」と言われています。私もそう思っています。しかし、そうは言いつつ、マスコミの影響は絶大です。未だに「雰囲気」を作り出すのは上手いですからね。現政権がここまで長続きしているのも、私はマスコミが結構な部分で貢献していると思いますよ。マスコミがきちんと報道をして、少なくとも民主党政権時代レベルにまで「権力の監視役」としての機能を果たしていれば、すぐに瓦解していると思いますけどね。国民は忘れてしまうものなので、ずっと追及していくことは大切だと思います。モリ・カケ問題も未解決だけど、質問すると「揚げ足取り」とか、「野党が審議の時間を奪っている」と頓珍漢なことを言う人がいるのも、この点が影響していると思いますよ。マジで。

 

 まぁ他にも民主党政権時代のトラウマとかが国民にあるのだろうと思いますけど、政権交代できるくらいの政党を育てるくらいの気持ちでいかないといかんなぁと思います。・・・こんなこと選挙後に言っても仕方ないな。

 

 

ハリウッドの政治批判映画。めちゃくちゃですけど面白かった。

inosuken.hatenablog.com

 

 割とストレートに政権批判していた作品。

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