暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

2019年春アニメ感想①【さらざんまい】

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 「少女革命ウテナ」「輪るピングドラム」など、独特すぎる作品で知られる幾原邦彦。本作は、2015年に放送された「ユリ熊嵐」から4年振りとなる彼の最新作です。彼の作品はとりあえず見ますし、「少女革命ウテナ」と「輪るピングドラム」は好きなので視聴した次第です。

 

 幾原邦彦さんは、作風自体はとても独特です。バンクシステムを流用や、演劇を模したかのような演出、ハッタリ、ケレン、メタを駆使した構成など、作品は「幾原印」とも言える要素がたくさんあり、全体としてはキッチュな感じすらあります。しかし、その印象とは裏腹に、そこで描かれていたことは、中々普遍的なものだったと思います。だからこそ、私は彼の作品が変でも最後には感動してしまえるのでしょう。

 

 

 本作で描かれていることは、「人と人のつながり」です。普通ですね。しかし、幾原監督にかかれば、一筋縄では理解しがたいものになります。

 

 まず、本作の基本的な流れを書いてみます。「欲望搾取」からの「カワウソイヤァ」でカパゾンビが出現。一希をはじめとする3人の男どもは誰か1人の尻子玉を抜いてもらうことでカッパになり、「さらざんまいのうた」でカパゾンビの欲望をカッパらいます。そしてさらざんまいを発動させ、自信の秘密を漏洩させることで、「銀の皿」を獲得していきます。

 

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 基本的に各話の後半はこれをバンクで使い回していきます。本作はこれを繰り返して話が進んでいくのですが、話が進むにつれて、どんどん皆の秘密が漏洩していくのです。そして、この「漏洩」こそがつながりを描く上で必要なものなのだと思います。

 

 我々は、皆大なり小なり他人には言えない秘密を抱えています。本作の登場人物もそうです。一希はアイドルに女装して弟を欺いているし、燕太は一希に性的な意味で好意を抱いています。また、悠は殺し屋家業の手伝いとかしてるわけです。彼らは、これらの秘密=欲望を持っています。そして、各々がそれぞれ特別な人と「つながりたい」と考えています。でも、これらがバレたら「つながれない」から隠しているわけです。

 

 さらざんまいの漏洩は、これらの秘密を暴き、秘密を共有させることで、互いの真意を知り合うという機能を果たしているわけです。そして、その秘密を知った上で交流を結ぶことこそが、本当の意味での「つながり」であり、アイツらにとっての「成長」なのだと思います。

 

 この「つながり」については、具体的には、中盤の山場である、一希のエピソードが印象的です。家族とつながれず、疎外感を抱いていた彼が、「つながり」を友人と共に獲得するあの下りはとてもいいものでした。個人主義だ何だとか言われている現代人的には、この「つながりたいけどつながれない」は非常に普遍的なテーマだと思います。

 

 テーマは普遍的でありながら、外見は幾原節全開。まずはバンク。このバンクがもう、見ていて実に楽しい。何が起こっているかはよく分からないのですが、アニメーションがダイナミックな感じで、しかも過去作と同じく、歌もそれぞれが妙に中毒性があるもので、何回同じものが流れても飽きません。他にも、モブとか、キャラの設定が次から次へと明らかになる展開など、過去作と似ている要素はかなり多いです。

 

 しかし、本作には、過去の幾原作品とは決定的に違う点があります。それは、本作が「男の物語」である点。これまでの幾原作品では、男というのは、女の野望や、望みを叶えるための障害、若しくは犠牲でしかありませんでした。しかし、本作において男は、犠牲になるでもなく、最後に「つながり」を獲得します。さらに、女性キャラもほぼ出てこず、BLがメイン。玲央と真武の2人は泣かせましたね。この点は新しいのではないでしょうか。

 

 このように、本作はキッチュなもので普遍的な「つながり」を描くという幾原作品的な内容でありながら、男キャラが救済されるという、過去の作品とは少し違う内容も持つ作品でした。