暇人の感想日記

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ヒーローのオリジンとして、家族の物語として素晴らしい【シャザム!】感想

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82点

 

 

 『アクアマン』で興行的にも批評的にも大成功を収め、一気に信頼を回復した感があるDC映画。次に放ったのは、「見た目は大人!中身は子ども!」という、日本の国民的名探偵を彷彿とさせる奇抜なヒーロー、シャザムでした。予告を観る限りはすこぶる愉快そうな内容でしたし、結構楽しみにしていました。

 

 鑑賞してビックリしたのが、本作がただのコメディではなく、ヒーローのオリジンとして、そして、今流行りの「疑似家族」を形成する話だったということです。しかも予告通り笑えるシーンもしっかりあるので、かなり楽しむことができました。

 

シャザム! :魔法の守護者(THE NEW 52! ) (DC)

シャザム! :魔法の守護者(THE NEW 52! ) (DC)

 

 

 本作の主人公はビリー・バットソン。彼は孤児であり、幼いころに母親にはぐれ、そのまま置いて行かれてしまったという過去があります。そのため、今でも母親を探し続けていて、里親に馴染もうとせず、何度も脱走を繰り返しています。そんな感じなので、次の里親であるバスケス夫妻とグループ・ホームにいる子供たちにも全く心を開こうとはしません。

 

 そんな彼ですが、いっぱしの正義感を以て同居中のフレディを助けた帰りの電車の中、謎の神殿に連れていかれ、これまた謎の爺さんに意味不明な呪文を言わされ、全身赤タイツの大人の姿になり、超パワーを得てしまいます。書いていると馬鹿みたいですが、本当だから仕方がない。かくして超パワーを得たビリーは、ヒーロー稼業に精を出す・・・と思ったが、そんなことはなかった。いくら体が大人になり、超パワーを手に入れたといっても、頭の中身はガキのまま。多感な男子が大人の外見を手に入れたとして、まず何をやるか。そりゃ「大人の特権」ビールを飲む!ストリップ・バーに行く!これでしょう。彼にとって、ヒーロー活動は割とどうでもよく、予告の強盗退治もコンビニに偶然居合わせた関係で仕方なくだし、実弾が効かないとなると大はしゃぎして、「もっとやって!」と言う始末。見た目がスーパーマンのパチモンみたいなだけに、余計にどうしようもなさを感じられます。

 

 ビリーのサイドキック(相棒)となるのがフレディ。彼はヒーローに憧れているオタクで、真偽が定かでない「スーパーマンにあたった銃弾」を大切にしています。彼がヒーローに憧れているのは、自身の体のことが影響しています。だからこそ、彼は超パワーが目の前に現れたとき、ビリー以上に大はしゃぎし、マネージャーとして活躍していきます。そして、それ故にラストで得た力に意味があるのですが。この時、超パワーの試行錯誤を動画に撮り、Youtubeにアップして知名度を得るというのは非常に現代的ですね(世界観はDCEUの中の1つなので、ヒーローの存在自体は認識されている)。しかし、だからこそ超パワーを「正しく使わない」ビリーに対し、本気で怒りもするのです。

 

 本作では、音楽、映画などが多く引用されています。その中でも注目すべきは、『ロッキー』についてでしょう。劇中の舞台は『ロッキー』と同じフィラデルフィアであり、劇中でも『ロッキー3』の名曲「Eye of the Tiger」が流れます。柳下毅一郎氏もパンフで書かれていた通り、『ロッキー』シリーズも各々が絆を結んでいく物語でした。本作でも、ビリーはフレディや、バスケス家の人間と絆を深めていくという点で共通しています。「昔の家族」とけじめをつけ、「今の家族」を選んだフレディ。彼はその時、遂に他者のためにその力を使います。

 

アイ・オブ・ザ・タイガー

アイ・オブ・ザ・タイガー

 

 

 本作の敵はドクター・シヴァナ。演じるのはギンティ小林さんより「ブリティッシュハゲ」と命名されたマーク・ストロング。本作でシヴァナは、「シャザムになれなかった男」であり、徹底してビリーと対極の存在として描かれます。力に憑りつかれ、家族を否定し、力を1人で独占しています(親を殺すシーンは、完全にホラーのそれ)。要はアメコミ映画が大好きな「主人公のダークサイド」なわけです。「家族を否定した男」に、ビリーは新しい家族と共に立ち向かい、打ち克ちます。これにより、本作が「疑似家族映画」として素晴らしいものになっていると思います。

 

 また、フレディがいじめられっ子であり、今回の件で居場所を見つけ、ビリーと共に成長するという点は、どこか『グーニーズ』的な感じがします。

 

 このように、本作は笑えて泣けて、アツくなるという、吹き替え監修をした映画監督が撮った映画『銀魂』のキャッチ・コピーをそのまま使えるほどに(しかもあっちより断然面白い)楽しめる作品でした。親子で観ても全然いいよ。

 

 

同じくDC映画で、素晴らしい作品。

inosuken.hatenablog.com

 

同じような雰囲気を持つ作品。役者も同じ。

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