77点
2018年に発売された、同名ゲームの映画化作品。私はゲームは全くやっておらず、CMでやっていた大川透さんの声だけがやたらと印象に残っています。そんなボンヤリとした印象しかなかったので、「ハリウッドで映画化!」と聞いても全く期待していませんでした。むしろ、「爆死案件」くらいに思っていました。
しかし、『スパイダーマン スパイダーバース』を観た時に流れた予告を観て考えが変わりました。モロ「デッドプール」な喋り方をし、でもそのすぐ後に耳に馴染んだ大谷育江さんの声で「ピカピカ!」と鳴くピカチュウの姿に完全に笑わされたのです。以来、どうにも気になってしまい、とうとう鑑賞してしまった次第です。
鑑賞してしまった結果、非常に楽しむことができました。これは本作の前に観た映画が『バースデー・ワンダーランド』だったことも関係しているような気もしますが、とにかく、バディものとして面白く、そしてポケモン(特に第一世代)に親しんだ人間ならばニヤリとする小ネタの数々が豊富に盛り込まれている作品でした。
本作を鑑賞してまず驚いたのが、「ポケモンがいる世界」の再現度の高さです。CG技術が発達し、人間以外の生き物も本物と見間違うレベルに映すことができるようになった今、『猿の惑星』新3部作、『ジャングル・ブック』など、様々な映画が作られました。本作はその流れから、ポケモンを非常に「リアル」に作ってあります。キモリやゲッコウガなどの爬虫類、両生類系の若干の気持ち悪さとか、ベロリンガの舌はアニメ、ゲームだと許容できるけど、本物だったらあんな感じだよねとか、コダックのよちよち歩き、ブルーの何か知らん可愛さ・・・、おい、何だこの的確過ぎる映像化は。毛並みや肌質等もかなりリアルだし。
また、ポケモンの特性の表現も上手くて、カイリキーは手数を活かして交通整理してるし、地下闘技場でのゲンガーのバトルシーンは素晴らしいの一言。抽象的で、ゲームでは分かりづらかったゴーストタイプの戦い方をかなり上手く映像化しています。それはラストバトルにも言えます。
さらに、ポケモンの小ネタもしっかり拾ってくれています。アニメでも割りと忘れられているリザードンの「尻尾の炎が消えたらヤバイ」とか、カラカラの「孤独」についての言及とか、とにかくポケモン図鑑の説明に載っているような設定をしっかりと拾っているのです。
このように再現されたポケモンの中で、一番目を引くのはやはりピカチュウ。毛並みがあり、ベラベラ喋りまくります。その様は完全に「Fワードを使わないデッドプール」な訳ですが、とにかく表情の変化が豊かで可愛い。嬉しそうなとき、落ち込んだとき、ピカチュウの顔が感情豊かに動きます。でも中身はデッドプールというこのギャップ萌え。いやたまんねぇ。でも、中身はデッドプールなので、やはりメタ発言を連発し、でんこうせっかとボルテッカーを「アレは俺も痛いからパス!」とか言ったりします。
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こんなライアン・ピカチュウと共に事件の謎に迫っていくのはティム。かつてポケモントレーナーを目指しながらも、父とのすれ違いから諦めてしまった過去を持つ青年です。だからポケモンを避けているのですが、そんな彼がピカチュウと共に苦難を乗り越え、絆を深めあっていく姿は見飽きた展開とはいえ、思わずグッときます。
そしてこの「絆を深める」ことはポケモン作品の中では非常に重要な要素であり、ここをきちんとやっているという点で、本作はまさしく「ポケモン映画」なのだと思います。そして、さらにそれが「家族の物語」にスライドしていくことで、幅広い人が観られる作品になっていると思います。
また、本作には、名作『ミュウツーの逆襲』のオマージュを強く感じます。球体のカプセルの中にミュウツーが入っていること、そのミュウツーが最初に確認されたのが「約20年前のカントー地方」だということ等から、意識しているのは明白。ストーリーも薄められているとはいえ、「人間とポケモン」という、『ミュウツーの逆襲』を彷彿とさせるものです。
確かに、「名探偵」とタイトルに付いてる割にはあんま推理しないとか(だいたいホログラムが教えてくれる)、ラスボスが類を見ない間抜けだとか思うところが無いわけではないですが、「ポケモン映画」に必要なことをしっかりやり、その上で面白い作品に出来ているという点で、本作は充分観るに値する作品だと思います。
ライアン・レイノルズの代表作。こっちはFワードを連発する男でした。
こちらも最高でした。これを見ているときに流れた予告を観て観たくなりました。