暇人の感想日記

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「すべてがサイコー!」のその先へ【レゴ(R)ムービー2(日本語吹き替え版)】感想 ※ネタバレあり

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86点

 

 

 「レゴをレゴのままアニメーションにする」という前代未聞の試みと、完成度の高い脚本、そして「レゴ」だからこそ込められる普遍的なメッセージ。前作は、劇中の歌の通り、「全てが最高」な作品でした。

 

 本作はそんな前作『レゴ(R)ムービー』の5年振りの続編です。監督こそ『シュレック フォーエバー』のマイク・ミッチェルに代わりましたが、脚本には、前作では監督も務めたフィル・ロードクリストファー・ミラーが続投ということで、安心して楽しみにすることができました。

 

 

 鑑賞してみると、前作で我々を存分に楽しませ、驚かせた「レゴの動き」と、テンポよく進むストーリーも健在。しかし、本作はそれだけに終わらず、前作で提示したテーマを発展させ、その「先」までをきちんと描いた作品で、続編として「最高」でした。

 

 前作のテーマは何だったかと言えば、それは「独創性」だったと思います。レゴは自由な発想で自由に遊べる。独創性次第で、エメットみたいなモブすらヒーローになれる。大人になれば固定観念に囚われてしまい、自由な発想が出来なくなる事と対比されることで、感動的な内容になっていたと思います。

 

 本作は、『インクレディブル・ファミリー』と同じく、前作のラストから始まります。エメットの友好姿勢も虚しく、謎の勢力の介入により、荒れ果ててしまったエメット達の世界(それが完全に『マッドマックス 怒りのデス・ロード』なのには笑うしかありませんが)。皆の心は疲れ果て、シリアスなモノローグを連発して生きるようになってしまいます。しかし、そんな中でもエメットは相変わらずのお気楽思考。その姿に呆れた仲間からも、「早く大人になれよ」と嗜められてしまいます。本作では、前作でレゴの可能性を示してみせたエメットが「大人」になろうとする姿を描きます。

 

 

 ここでエメットが目指そうとする「大人」は今の彼とは正反対のものです。シリアスになり、目の前の敵を殲滅することに躊躇しない、ワイルドな奴です。この目指すべき姿を体現しているのが、中盤から出てくるレックス。彼は見た目がとてもワイルドで、孤独に生き、敵勢力に容赦しない、エメットの憧れそのもの。声優も同じで、ヴェロキラプトルを部下に持つという声優ネタも完備しています。そんな頼れる存在ですから、もちろんエメットは彼のようになるべく、共に行動します。そしてその甲斐あってか、エメットはレックスの必殺技も使えるようになり、見事に敵勢力の企みを打ち砕くのです。

 

 しかし、ここでハッピーエンドにならないのがこの映画。中盤で、これまでと視点がガラリと変わる展開が起こります。「敵」だと思っていた奴らは、実はただ遊びたかっただけだと分かり、「理想の大人」だったレックスが全ての黒幕だと判明します。

 

 この視点の転換により、「理想の大人」と信じていた姿は、見方を変えればただ相手の事を受け入れなかっただけの存在だった事が明らかになります。前作では、個人の「独創性」の大切さを描いていましたが、それはあくまでも1人で遊ぶ範囲内の事でした。この1人だけの独創性を突き詰めてしまった存在がレックスなのです。そしてこの姿は、現実の子どもの姿とも重なっています。前作では、型通りにはめようとする父親と対比させ、子どもが持つ独創性が如何に豊かなものであるかを見せていました。しかし、そんな彼も年齢を重ね、妹の価値観を認める事ができない男になってしまいました。この姿は、「違う価値観を認めることができない」点を見れば、かつての父親の姿と重なります。子供が成長し、父親のようになってしまったのです。

 

 

 本作は、子供が相手の価値観を認めるという点を、エメットが、自身のダークサイドであるレックスに打ち克つという描写に託していると思います。そしてそれにより、前作のテーマがより発展し、「共創」の話になっています。

 

 これは前作と同じく、「レゴ」だからこそ出来る内容だと思います。レゴを遊んでいた子供が、誰かと共にレゴを遊ぶ。これは自分だけの世界から、他者と関わるようになる子供の成長過程と重なるからです。

 

 1人で作っていれば、「全ては最高」だったかもしれない。しかし、他者と関わらなければ人は生きていけないし、限界もある。他者の価値観を認め、共に創造することで、より楽しいことができる。本作は、やっぱりレゴらしく、「つながる」ことを描いていたと思います。

 

 以上のように、本作は、前作のテーマをさらに発展させた、かなり良い続編でした。ただ、観ていると、やっぱり『ハン・ソロ』を降ろされたことをまだ根にもってんのかなぁ、とは思います。

 

 

2人が監督するはずだった作品。

inosuken.hatenablog.com

 

 

 2人の最新作。こっちもとんでもない傑作でした。

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