暇人の感想日記

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過去の陰惨な事件を暴け。【ドラゴン・タトゥーの女(2011年版)】感想

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87点

 

 

 全世界で大ヒットを飛ばした「ミレニアム」シリーズを原作とする本作。同じ原作を基に制作された「ミレニアム」三部作とは独立したシリーズで、監督は『セブン』『ファイト・クラブ』のデヴィッド・フィンチャー。前から観たかったのですが、ズルズルと後に回してしまっていて、今回、『蜘蛛の巣を払う女』の公開に合わせて予習の意味で鑑賞することにしました。

 

 やはり、さすがフィンチャー。非常に面白かったです。内容は昔起こったと思われる少女の失踪事件を解き明かすという王道のミステリ作品で、舞台は現場からほとんど動きません。バラバラだった謎が1つに繋がり、真相が明らかになっていく過程が非常に論理的なため、私がミステリに求めている「謎が解き明かされた時の快感」があり、ミステリとしても十分に満足できました。まぁ、フィンチャーらしく展開が異様に早いため、伏線や謎を忘れないようにすることに大分頭を使いましたが。また、起こる事件も監督の過去作『セブン』を彷彿とさせる要素が多く、宗教がキーになっていたり、猟奇的なシーンも多々あります。

 

 ミステリとしても中々面白い本作ですが、何より良いのは、ミカエルとリズベットのバディ・ムービーである点です。2人が信頼を深めていく過程は観ていてとても面白い。前半1時間は2人に全く接点がなく、バラバラに行動しているのですが、この前半でお互いの、特にリズベットを丁寧に描写することで、彼女が何故、ミカエルに惹かれれいったのかが分かる作りになっています。

 

 さらにこの前半のリズベットパートは作品全体のテーマとも呼応していると思います。前半でリズベットは自身に性的な暴行を働いたゲスな男どもを血祭りにあげていくのですが、本作全体も「虐げられた女性」の話でした。性的に支配されていた女性がそこから逃げ出し、自由になる。今でこそどんどん制作されている女性が活躍する映画の先駆け的な内容だと思います。

 

 他には、ミカエルが最高でしたね。ダニエル・グレイグが演じているから見た目が完全に『007』なのですが、女関係がまぁグズグズ。また、キャラ的には非マッチョな役なので、そのギャップにも笑ってました。ただ、推理担当として、きちんと事件を解決したのは良いですね。

 

 リズベットも素晴らしかったです。見た目はかなり奇抜なのですが、ミカエルに対しては中々に乙女。徐々に心を許していくのも良かったし、ラストの切ない感じも良かったです。

 

 シリーズものならば、2人の魅力は非常に大切。この点で、本作は主演2人に抜群の魅力があります。さらにストーリーも良いし、かなり良い作品だと思います。