暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

【ヴィジット】感想 ※ネタバレあり

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85点

 

 

 それまで大低迷期の中にいたM・ナイト・シャマランが起死回生の手段として世に放った作品。メジャー大作ばかりだったこれまでとは違い、本作は無名俳優を使い、製作費もわずか500万ドルという超低予算映画です。しかし、出来の良さは制作費には比例しないのが映画の不思議なところで、本作は非常に面白い作品でした。個人的には、ベスト・オブ・シャマランです。

 

 本作のジャンルはホラーに該当すると思いますが、その恐怖の煽り方が結構上手いのです。最初はちょっとした「違和感」だったものが徐々に形になって姿を見せていき、それが表出した時はとんでもない事態になっているのです。この「違和感」も普通の人間がやったらそれは普通に違和感になってしまうのですが、それを「老人だから」という理由を使ってカモフラージュしています。正直、ラストのネタは中盤でだいたい見当がついてしまうのですが、それでもそれが判明し、2人にとって本当の恐怖がやってくるシーンでは緊張しっぱなしでした。

 

 ただ、本作が真に素晴らしい点は、ホラーであると同時に、シャマランお得意の「トラウマを背負った者がそれを乗り越える」話である点です。本作でトラウマを抱えているのは3人で、姉弟とその母です。三者三葉のトラウマを抱えており、それを乗り越え、「家族」として再生していく姿を描きます。姉は「鏡」のトラウマを克服し、弟は1番酷い目に遭いながらも、きちんとやるべき時に行動し、それらを知った母親はそれまで抱えていた自身の母への想いを取り戻しました。この家族が再生するシーンでかかる音楽も伏線の張り方が素晴らしく、ちゃんと感動できるポイントとなっています。このように、本作はシャマラン作品の中ではかなり「普通」の良作なんじゃないかと思います。

 

 ラストも素晴らしかったですね。トラウマ的体験をラップに昇華して歌う弟と、その奥で鏡の前で髪をとかす姉。それぞれがトラウマを克服し、次に向かおうとしている素晴らしいシーンでした。めっちゃ笑ったけど。

 

 POVについても、本作そのものが姉が制作した映画なんだと考えれば、手法にも納得がいきます。シャマラン映画にあった尺の配分の可笑しさも短いせいか感じなかったし、楽しめました。