暇人の感想日記

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マカヴォイの名人芸を堪能しよう【スプリット】感想 ※ネタバレあり

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78点

 

 

 『ヴィジット』で復活を果たしたシャマランが次に放った作品。かなりの良作であった前作と比べると、本作は以前のシャマランらしく、展開と共にジャンルも変わるという変な映画でした。

 

 本作はまずスリラーとして始まります。私は冒頭からやられました。カメラが追っていたと思っていたら、実はそれは誘拐犯の視点で、不意に女子高生が乗っている車に乗り込んでくる。ここで一気に恐怖を煽られます。なんか日常でも普通に起こりそうなのが怖い。そこから監禁された女子高生3人の脱出劇が描かれます。

 

 敵対する誘拐犯はジェームズ・マカヴォイ演じる謎の男。彼はどうやら多重人格者であるらしく、『サイコ』的なミスリードもちょっとだけします。いくら脱出しようとしても追いかけて捕まえてくる彼の姿は恐怖以外の何物でもありません。しかし、観察すると多重人格の中には話が分かる人格もあるということが分かってきます。

 

 この男について目を見張るのはやはりジェームズ・マカヴォイの演技力。何役もの違う性格の役を見事に演じ分け、しかも「今出ている人格が別の人格を演じている」という非常に高度な演技まで見せてくれます。この点において、本作はジェームズ・マカヴォイ無双と言えなくもないです。

 

 本作はこの男と女子高生3人の駆け引きを描く脱出劇です。中盤までは。そこはやはりシャマラン。途中でジャンルが変わります。具体的に言えば、サイコスリラーからまさかのスーパーヴィランのオリジンとなり、ラストで「あの男」が出てくるのです。まさかの展開ですが、シャマランのフィルモグラフィを見れば、何となく納得できます。

 

 シャマランは『アンブレイカブル』を『シックス・センス』の後に制作し、あちらはスーパーヒーローのオリジンでした。そして本作はシャマランが再出発をした直後に撮られ、スーパーヴィランのオリジンです。本作と『アンブレイカブル』は時期的にも内容的にも似通った部分があまりにも多いのです。

 

 さて、そんなシャマランの趣味が炸裂した作品ですが、描かれていることはやっぱり同じ。本作では叔父に性的虐待を受けていたテイシーが、自らと同じような傷を持った存在と向き合うことでトラウマを克服し、前に進む姿を描いていました。本当に同じだよな、シャマランは。

 

 さて、本作は現在公開中の『ミスター・ガラス』と繋がっているようですが、本作でやや宙ぶらりんになったケヴィンの心のケアは誰がするのか、覚醒したビーストの行く末は、そして『ミスター・ガラス』はどんな内容になっているのか、非常に楽しみですね。

 

 

直接的な前作。こちらは変な映画でした。

inosuken.hatenablog.com

 

 

本作の続篇。シャマランの信念が結実していた作品でした。

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