暇人の感想日記

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「死なない(UNBREAKABLE)男」と「壊れやすい(BROKEN)男」【アンブレイカブル】感想 ※ネタバレあり

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55点

 

 

 M・ナイト・シャマランが『シックス・センス』の次に放った作品。『シックス・センス』は一見ホラーながらも実は心に傷を負った者がそのトラウマを乗り越えるというヒューマンドラマでした。しかし、そんな普通の良作であった『シックス・センス』と比べると、本作は非常に変な映画となっていました。

 

 本作が「変」である点は色々あるのですが、1番変な個所はストーリー展開です。シャマランと言えば「大どんでん返し」ですが、本作はラストまでに展開が二転三転し、その度に映画の内容が変わるのです。

 

 まず、本作は「悲惨な列車事故」で生き残った男、ダン(ブルース・ウィリス)が、何故生き残ったのかを探るサスペンスとして始まります。しかし、並んで主役をはるイライジャ(サミュエル・L・ジャクソン)がダンと接触を図ったことから、映画の内容が超能力を持ったスーパーヒーローものになります。そうか、これはダンのオリジンの話なのかと思って観ていくと、ラストの大どんでん返しによって、「ヴィランのオリジン」でもあったと判明するのです。

 

 こういう作り自体はとても面白いです。「現実にヒーローがいたら?」という『ダークナイト』以降のアメコミ映画的な内容を2000年にやっていたことは先見の明があったと思うし、何よりシャマランの作家性みたいなものがやっぱり見えているのも面白い。本作ではおそらく「ヒーローの憧れる」息子と「実はヒーローでは?」と悩むダンと、「ヒーローいるんじゃね?」と夢見るヤバい奴、イライジャの3人はシャマランの写し鏡だと思うし、ダンが「使命」を見つけて最後に自警活動に目覚める姿には一種のカタルシスがあります。

 

 ただ、私は本作にも『シックス・センス』と同じことを感じました。つまり、起承転結の承が長いということです。ダンが悩む姿に尺を使いまくっていて、使命に目覚めたときには映画は残り30分くらいなのです。しかもイライジャが全ての黒幕だと判明したところで映画が終わるので、消化不良感が半端じゃないです。だってMCUで言えば映画の中盤くらいで終わるんですよ。しかも対処方法が「通報」ってのも普通すぎて「何じゃそりゃ」な感じです。

 

 ただ、何故こうなったのかを考えると、それは多分前述の「ジャンルが二転三転する」ってことが関係していると思います。ジャンルが変わるたびにそのジャンルの「承」が始まるため、結果として「承」の部分が長くなってしまうのだと思います。

 

 このように、色々とバランスがおかしい作品でしたが、そのおかしいところも何だか楽しめてしまえるというとても変な映画でした。