暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

設定とキャラの関係性の深化【ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生】感想

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77点

 

 

 現在大ヒット中の「ハリー・ポッター 魔法ワールド」第2弾。前作も大ヒットしたそうで、さすがハリポタだなと思ったのですが、個人的には微妙な出来の作品でした。なので、本作の出来次第ではシリーズを追っていくのを止めようと思っていたくらいです。しかもそんなテンションなので劇場まで足を運ぶ気にはあまりなれなかったのですが、『ボヘミアン・ラプソディ』の予想外の大ヒットのおかげでIMAX上映が終わってしまうと知り、昨年の12月の半ばに急いで鑑賞してきました。

 

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 鑑賞してみて、少しホッとしました。前作とは違って、完全なる次へのブリッジ作品となっていましたが、前作で提示された要素をさらに深化させ、結構面白い作品となっていたからです。

 

 まず、本作はIMAX3Dで観るのがベストだということです。IMAXではないにせよ、3Dで観た方がいい作品です。というのも、本作は全体的に3Dを意識した構図が頻出しているためです。具体的には、奥行きのある画面、フレーム・ブレークの多用がされています。しかもIMAXで観れば魔法動物の巨大ぶりも堪能できるので、圧倒的な臨場感を以て映画を楽しむことができます。これは映画館でしか体験できないことで、これだけでも金を払う価値があると思います。

 

 その他にも、ストーリー的にも前作より好みでした。まず、ニュートが有能。前作では「プロフェッショナル感」を全く感じさせない魔法動物の追跡方法をとっていましたが、本作では魔法道具や呪文を駆使し追跡をしています。まぁ、その対象がヒロインであることは問題なのですが。でも、この追跡が後の展開にしっかりストーリー的に繋がっていたりして、前作を観た時に感じた「前半と後半があまり繋がってない」とも思いませんでした。

 

 ただ、本作が単体でいいかと言えば全くそんなことは無くて、前作ありきの完全なブリッジ作品でした。でもブリッジ作品であることに開き直って作っている作品なので、それは好感度が高いです。

 

 中でも良いと感じた点は、前作からあった要素の掘り下げとキャラの関係の変化を長々と描いていた点。前作にあったノー・マジと魔法使いの現代的な「分断」がかなり掘り下げられていて、それが主人公の決断とキャラの関係性の変化に密接に関係しています。ニュートの「つく側」の選択とか、ジェイコブとクイニーの関係の変化などです。そしてさらにそれが我々人間の歴史にまで裾野を広げていくという展開の拡大。これが見えたことで、敵の狙いも明確になり、勧善懲悪の単純な図式にあてはめられない存在になりました。『ハリー・ポッター』シリーズは勧善懲悪だったことを考えると、本作はやはり、『ハリー・ポッター』当時は子どもで、今は大人になった我々に向けて作られていることが分かります。また、このシリーズとの差異で描くと、「選ばれた存在」が「敵側」なのも面白いですね。

 

ハリー・ポッター文庫全19巻セット(箱入)

ハリー・ポッター文庫全19巻セット(箱入)

 

 

 さらに、敵側に着目してみると、舞台設定にも納得がいきます。本作の舞台はフランスのパリ。これは言わずもがなフランス革命の契機、バスティーユ襲撃が起こった地。グリンデルバルドは今の魔法界に革命を起こそうとしていて、そのための決起を促す集会を開くという展開とフランス革命がダブります。そしてそこで集結する者、敵対する者が分かれたところで物語が終わります。最初の台詞をちゃんと回収していますね。

 

 他にも、『ハリー・ポッター』を観ていた人には嬉しいサービスがてんこ盛りです。あの人もあの人も、さらにはあの人まで出るとは。そしてやはりダンブルドアは最強。

 

 このように、ファンサービスも欠かさず、しかしファンを苦しませたJ.Kローリング氏。やっていることは前作の整理でしかないので、もう少し短くできないのかよとか明らかに乱暴な展開もありましたが、次が気になるほどには楽しめた作品でした。次も観ると思います。