暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

2018年夏アニメ感想⑧【はるかなレシーブ】

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 最初は不純な動機でした。夏に放送されるきらら枠で、題材はビーチバレー。想像するのはそりゃもちろん女の子の水着です。普通のアニメなら1クールに1回あるかないかのサービス回を、題材的に考えればほぼ毎回見られるのです。誰だって視聴しようという気になりますよ。このような気持ちで見始めたのですが、放送中の去る8月、私はとある映画を鑑賞します。『菊とギロチン』です。

 

 

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 これは関東大震災直後の日本を舞台に、実在の政治結社のギロチン社と女相撲を描いた作品です。変わった映画でしたが、面白かったです。これはどうでもいいか。この作品の中で、ギロチン社に属している東出昌大が、女相撲を見てこう言うのです。「何だ脱がねぇのか」と。相撲と言えば裸で、女がやるとなれば女の裸目当てで来る人間もいるでしょう。彼女たちは真剣に相撲をやっているのに、そこを見ようとせず、ただ自分の欲求を満たしたいがために相撲を見に来るのです。何て失礼な奴ら。しかし、私もこいつと同類だったのです。自らの欲求のために見ていたことに気付かされました。そのことが少しだけ申し訳なくなるくらい、本作は、直球の青春スポーツアニメだったのです。

 

 本作は東京から沖縄に引っ越してきた高身長の大空はるかが、ビーチバレーから背を向けているやや小さめな身長の女の子、比嘉かなたと出会うところから始まります。そして、全12話を通して、この2人が最高のパートナーとなる様子を描いていました。まだコンビとして完成していなかった彼女たちが徐々に距離を縮めていき、最終的に最も身近にいる「最高のペア」エクレアペアに勝利をおさめるという全体のまとめも上手い構成だなぁと思います。そして勝負の後も、勝った者の責任、負けた者の悔しさが入り混じり、それでも互いを認め合うという友情を描くという何とも爽やかな終わり方。清々しいまでにザ・王道です。

 

 試合シーンもとても良かったです。動きも良いし、皆戦略的に戦っているのも良いのですが、それぞれ相手チームの気持ちをコンパクトに纏めてくれている点が何より良いです。こうして相手にもドラマを持たせると、互いに背負っているものが浮き彫りになって、試合を見る目にも気持ちがこもってしまい、どちらも応援したくなるのです。そしてこの試合を重ねるごとに、はるかとかなたが信頼を積み重ねていくことがしっかりと分かるのです。まるで他のペアの気持ちも吸収していくように。

 

 また、本作はビーチバレーという競技をフルに活かしていると思っています。まずはコートです。前衛と後衛に分かれるわけですが、それはお互いがお互いを信頼していないとできません。だから、はるかなペアが強くなることがイコールで絆が深まっていることに繋がります。そしてネット。これが効果的に使われている箇所が何個かあって、具体的には鳴海との握手シーンですね。気持ちが断絶していた相手と心を通わせる演出に役立っていました。

 

 さらに上手いと思ったのは、カップリング問題についてですね。これはビーチバレーはその性質上、2人1組でやるわけですから、必然的にカップリングが出来るわけです。しかもそれがストーリーに直結している。これは上手い。気付いたときは舌を巻きました。でも、それでも青春スポーツアニメとしての面白さをしっかり担保しているあたり素晴らしいです。