著:辻田真佐憲
発行所:株式会社 幻冬舎
・前書き
当ブログの紹介文ではこう書いてあります。「映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです」と。ですが、記事を見渡してみたら、あるのは映画とアニメの感想ばかり。本の記事は、漫画とラノベだけという始末。しかも最近はアニメの感想記事を書くことすらできていない(見ていないわけではないです。今のクールだって12本くらい見てるし。念のため)。このような状態に終止符を打つため、今回、初めて新書の感想記事を書いてみます。
・本文
さて、今回感想を書くのは、辻田真佐憲著の『ふしぎな君が代』です。私がこの本を知ったのは、よく聴いていた今は無きタマフル(ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル)で辻田さんをゲストに呼び、本書に端を発する「君が代特集」をしていたためです。聴いていて、「そういえば私も君が代については何にも知らないな」と思ったので、自らの無知を正すために読みました。
ここで、本書を読む前の私の「君が代」の知識を書いておくと、大きく2つのことしか知りませんでした。1つは「作曲者は外国人」2つ目は「歌詞は古歌からとった」です。しかも、本書に書いてあるように、私自身も高校を卒業してから全く「君が代」を歌っておらず、「聴く」ものとして認識していました。つまり、何も知らないに等しかったわけです。
幻冬舎出版の本で、題材が「君が代」。これだけ聞くと保守的な本なのかと思われるかと思いますが、違います。また、リベラル的な「君が代反対」な内容なのかと言えば、そうでもない。本書は、賛成にも反対にもどちらにも距離を置いて、「君が代」の歴史を記したものになります。より具体的に書くならば、本書の内容を借りて、以下の6つをメインに書いています。
①何故この歌詞が選ばれたのか
②誰が作曲したのか
③いつ国家となったのか
④いかにして普及したのか
⑤どのように戦争を生き延びたのか
⑥なぜいまだに論争の的になるのか
この6つを膨大な資料と、それに基づく緻密な調査によって解き明かしていきます。文体も非常に平易で読みやすいです。
本書の中で特に面白かったのは、「君が代」が急ごしらえで作られたという事実。しかも、国歌でありながら、宮内省と海軍省という一部の省が中心となり作成したとのこと。さらにそこから国民に普及して定着する過程も面白く、音楽雑誌と教科書が大きな影響力をもったとのこと。
私はこの成立と普及の過程は非常に日本らしいなと思いました。というのも、明治政府自体も急ごしらえで作り、そこから日本は一気に近代化を進めていきました。しかしそれは、夏目漱石が指摘したように、外面上の近代化だったと思います。その急ごしらえ感が「君が代」の成立とダブります。しかも成立したものをコペルニクス的転換の発想でいい感じに解釈していくところなんかも日本っぽいなぁと思いますね。こういう意味でも、「君が代」は日本の国歌だと思います。
何か小学生の読書感想文みたいになっちゃった。これ1冊で「君が代」についてはかなり詳しく分かるし、文体も平易なので非常におすすめです。日本人必読だと思います。