暇人の感想日記

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【50年後のボクたちは】感想:拗らせ少年の夏の思い出

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73点

 

 メンズデーで、「パターソン」と合わせて鑑賞した本作。鑑賞しようと思った理由は、予告で、主人公がクラスのマドンナ的存在にも招待されない「イケてない奴」だったからですね。評判もまずまずだし、これは観ておかなくては思いました。

 クラスで浮いていて、「サイコ(変態)」と言われているマイク。彼は年頃らしく中二病をこじらせていて、父親とその愛人に向けて射殺のイメトレをしたりしている。クラスのマドンナ、タチアナに絶賛恋愛中だが、カースト上位の彼女には到底声などかけられない。そんな鬱屈した日々を過ごす中、クラスに転校生がやってくる。名をチチャチョフと言った。ヤバい奴だと思ったが、タチアナに自分をアピールするために買ったジャンパーを気に入られてしまう。夏休みが始まった。マイクの両親がいないある日。チチャチョフ(以降、チック)は突然車でやってくる。聞けば彼の祖父がいるという地、ワラキアを目指そうというのだ。こうして、2人の一生忘れられない、大切な珍道中が幕を開けた。

 このように、本作はマイクがチックという規格外と交流することで人間として成長する「スタンド・バイ・ミー」的な話です。しかしこの映画、マイクの拗らせ具合が本当に素晴らしいです。上述の「射殺」とか、その後の台詞とか、いちいち中二臭くていい。

 「未来なんてクソくらえ」今作のキャッチコピーです。本作には、全体的に現状の社会に対する反骨精神が出ています。それはマイクが家族に問題を抱え、クラスでも浮いていることと無関係ではありません。彼は社会では「異端」なのです。そんな彼が、チックという友人と共に行動し、途中で知り合ったイザと恋愛することで成長するのです。そこには彼を束縛するものは何もありません。憎たらしい親父とその愛人も、クラスの奴らも、教師も、何もありません。本作のストーリーは、そのようなそれまで自分を取り巻いていた社会と隔絶された世界で進んでいきます。

 ある程度大人なら何てことない話でしょう。ですが、マイクは14歳です。14歳の夏は非常に特別なんです。人は14歳であった作品に支配されると言われるくらいに。この時期にあんな経験をしたらそりゃ大きくなりますよ。ラストでただの中二病患者だった彼が、人間として何周りも成長した姿は見ていて感動しました。彼はもはやクラスでも異端ではなく、「マイク」という1人の人間として君臨したと思います。チックのメッセージがそれを証明しているのかなと思います。子どもの時代(=車で彷徨っていたモラトリアム)は終わったのです。

 「50年後のボクたち」は、こんな時期の自分をどう思うのか。良い映画でした。