暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

ライトノベル感想【キノの旅XXIーthe Beautiful Worldー】

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 今年もキノの季節がやってきました。今年は例年とは違って、アニメ化もありコミカライズもありの祭り状態です。こんなアニバーサリー的なタイミングで刊行された21巻は、読者にとっては嬉しいサプライズが入った巻でした。

 21巻でも恒例の風刺の効いた話は健在です。悪徳ユーチューバーを描いたと思わせておいて、他人にかまわず自分勝手に相手に迷惑をかける輩を皮肉った「有名になれる国」や、明らかに朝鮮半島を題材にした「消えた国」、キノが通信教育を受ける姿を淡々と綴り、キノの他者との距離の取り方が現れた「Nの国」、大陸間弾道ミサイルを扱った「鍵の国」、AIを通して、「完璧」を求める人間を皮肉った「完璧な国」など、現在の世界をもとにした話は多く、安定したクオリティです。

 それと並行して載っているネタ回も良かったですね。一番笑ったのは「満員電車の国」です。確かに、中に入っている人間は会社という牢獄に送られる囚人なのかもしれません。

 白眉は「女の国」でしょう。最初から何となく想像がついていましたが、まさかここにきて師匠の過去をやるとは。ずっと明かさないと思っていただけに、意外とともに、嬉しくもなりました。でも、キャラが変わるのが少し唐突だったかも。

 しかし、全体的に安定していましたけど、不満点もあったのも確かです。21巻は淡々と世の中を風刺した話が多かった印象を受けました。なので、全体的に内容が平板になってしまって、師匠の過去話が無ければ少し物足りなかった気もします。でも、2回目の「カラーなあとがき」には感慨深いものがありましたし、全体的には満足しました。