暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

【マインド・ゲーム】感想:生と世界の圧倒的肯定

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99点

 

 「アニメーションは爆発だ」

 

 かの有名な芸術家、岡本太郎の言葉を借りれば、今作はこのように表現できると思います。この作品は、「生きること」への圧倒的肯定に満ちています。全編を通してアニメーションの動きが半端ではないですが、それそのものが「生」であって、今作自体が、生命エネルギーそのものみたいな映画でした。

 

 この映画、冒頭から凄まじいです。いきなり、その時点では意味不明なカットが、ものすごいスピードで映し出されていきます。ここで観客は混乱するのですが、映画はそんな客は放っておいて、どんどん本筋に入って行きます。そしてここでも湯浅印の超独特な演出、パースの連発。もうこの時点で頭がクラクラしてきますね。

 

 で、主人公が登場するわけですが、この主人公、すぐ死にます。しかし、現世への未練から、気合で生還するわけです。そして生還してからは何か知らんがハイになって、好きな娘とその姉と共にヤクザとカーチェイスを始めます。このカーチェイスも素晴しいです。アニメならではの滅茶苦茶な表現ですが、このシークエンスが、「動」の力に満ち溢れていて、観ていてとても気持ちいい。最高。個人的に、「カリオストロの城」級の名カーチェイスだと思います。

 

 そのカーチェイスの果てに、一行はあるクジラに呑まれ、お腹の中で生活することになります。そして変な爺さんに会い、奇妙な共同生活が始まります。初めこそいやいやだった生活も、段々順応してきて、快適に過ごします。ぶっちゃけ、もうこのままでもいいんじゃないかってぐらい。しかし、そこは自分たちのユートピアではあっても、「閉じた世界」なんですね。だんだん主人公たちは、外の世界を求めるようになります。そして、持てる力を全て使って、戻ってくるわけです。これがクライマックスですが、ここのアニメーションが本当にすごい。まさに「生きる力の爆発」です。そうして戻ってきた世界は、どこか前と違って、綺麗な色をしていましたね。

 

 こうして観ると、本作は「生きること」の肯定もありますが、同時に、この世界そのものも肯定しています。それは色にも表れていて、序盤は、現実世界は雨で、それ以外にも、明るい色は見えません。しかし、クジラの中で、主人公は、「世界は心の持ちようで変えられる。マインドゲームだ」と言います。まさにここか肝で、それに気づいた主人公が戻ってきた世界は、雨でも灰色でもなく、はっきり色づいていました。この瞬間、世界そのものを肯定したのだと思います。

 

 また、序盤の謎のカットですが、観ていくうちに意味が分かってきます。そして、最後に観客は、全てのキャラクターの人生が交錯した、まさにご縁の話だったんだと知るわけです。

 

 世界は、心の持ちようひとつで変えられる。そして世界は、いろんな人の人生が交わって奇跡的にできている。そんなことを思わせられる、素晴らしい映画でした。文句なく傑作ですね。