暇人の感想日記

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【新感染 ファイナルエクスプレス】感想:ゾンビ映画の傑作!!

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93点

 

 各国で絶賛された韓国製ゾンビ映画。日本でも前評判が非常に高く、公開前から楽しみにしていました。

 傑作だと思います。ただゾンビが出てきてワーキャー騒ぐだけのパニックムービーではなくて、日常の中にゾンビという異質なものが介入することで、現実の中に潜んでいる様々な問題を炙りだしている作品でした。序盤の、日常が何か異常なものに侵食されていく描写が非常に不気味でしたね。

 ゾンビも普通に怖いんですよね。それまで同じ人間だったものが違う「何か」になって襲ってくる様はトラウマものです。ゾンビの振り付けをした方は「哭声」の方だそうです。どうりで。また、それが電車の中という隔絶された空間ですから、基本逃げ場はないわけで、より絶望感が増すわけです。

 この極限状況の中で、生き残っている人間たちは、心を試されます。この映画は、登場人物をこれでもかというくらいに追い込んでいきます。そうすることで、人間の外見が剥がされ、「本性」が明らかになっていきます。そしてその本性が両極端に出たのが、主人公ソグと悪役ヨンソクなのでしょう。彼らは、本来は似た者同士です。ソグは最初は自分たちのことしか考えていませんでした。もし、彼が順調に他の乗客とともに逃げられていれば、サンファと出会っていなかったら、ヨンソクのようになっていたかもしれません。

 それは観客である我々も同じで、観ている間、終始「自分はどっち側なんだ」「自分ならどうする」と考えてしまいます。そしてこう考えていくと、主人公一行を排除した人々や、ヨンソクのことも単純に憎めないのです。このように、ゾンビを通すことで、自然に人間の持つエゴイズムを浮き彫りにしていて、「本当に怖いのは人間」という鉄則をきちんと描いていました。しかし、そればかりではありません。ソグは、最初こそ自分のことしか考えない男でしたが、中盤から成長します。ここに人間の希望を感じますね。

 人間のことばかりではありません。他にも様々な要素が描かれています。本作でよく描かれるのは、「分断」のイメージです。映画は列車を一両ずつ進んでいくわけで、そうすることで、ゾンビの進行を食い止めることができます。しかし、その過程で「救う人間」と「救わない人間」を分けているわけです。何だか、今の社会にも通じるものがあるような気もします

 また、今の社会に通じると言えば、勝ち組と負け組の分断でもあるでしょう。序盤でヨンソクが、浮浪者の男を指して、スアンに「勉強しないとこんな人間になっちゃうぞ」と言います。そんなことを言った彼が窮地に陥るとエゴを剥き出しにし、浮浪者の彼が人として尊厳を守り抜いたのは皮肉な話です。

 さらに、真相も良かったですね。大企業がしでかしたことが庶民に降りかかる。何だか、今の経済の病理をついたようで。

 もちろん、ラストの展開も涙なしには見られません。いろんな意味で、ゾンビ映画の傑作です。