79点
これまで権利関係の都合上MCUに参加できなかった本作が、遂に、本格的にMCU(ホーム)に帰って(カミング)きました。本作は復帰後の記念すべき初単独作です。そういう意味で、今作は特別な意味を持ちます。
どういう作品になるかと思いましたが、前作とはまた違った、新たな「スパイダーマン・オリジン」で、ピーターが「ご近所ヒーロー」となる決意を固めるまでが描かれている良作でした。
本作では、ピーターは「子ども」として描かれています。彼は一刻も早く「ご近所ヒーロー」から抜け出し、「アベンジャーズ」に入りたいと思い、実績をあげようとします。しかし、そのたびに空回りし、トニー・スタークに注意されます。本作において、トニー・スタークの役割は非常に重要で、どことなくピーターの父親のように描かれています。
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そして、今作の敵であるヴァルチャーは、違法な武器を製造し、悪党に売りさばいています。これは、どう見てもトニー・スタークの縮小版と言いますか、合わせ鏡です。つまり、「敵」として立ちはだかる人物が主人公の「父」的な存在のダークサイドなのです。これは、本作が「父親殺し」の要素を含んでいるといえると思います。「父を乗り越えることでヒーローとして成長する」とするならば、配役がマイケル・キートンなのも意味がある気がします(彼は以前、バットマンを演じていました)。
スパイダーマンはこのヴァルチャーの企みを察知し、阻止すべく奮闘しますが、とある大失態をやらかし、スパイダーマン・スーツを取り上げられてしまいます。ここから彼のリアルが充実しだすのですが、このスーツが無くなったから私生活が充実したというところとかは、ライミ版の2を思い出しました。しかし、終盤、彼はヴァルチャーの企みに1人気付き、阻止のためにもう一度戦いを挑みます。私はここが非常に重要だと思っていて、「スーツ」という圧倒的な力を取り上げられても、それより格段にダサくてショボい自前のスーツを着るのです。そこにあるのは、彼の純粋な正義感であり、勇気です。彼はそれ1つで強敵に戦いを挑み、ピンチに陥っても、誰も頼らず、自身の力で立ち上がります。私はここにもライミ版2の精神を見ました。
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話が飛びますが、本作には所々過去作のオマージュがありましたね。ネッドの「どのくらい糸が飛ぶか試した?俺なら屋上でするね」とか、逆さ吊りになったときにカレンに「ここでキスをしましょう」と言われる所とかです。観ていて少し嬉しくなりました。
また、本作は監督の前作「コップ・カー」とも似ていると感じました。あの作品は、子どもが最初イタズラのつもりが、最終的に恐ろしい事件に巻き込まれるというものでした。本作も、最初は「ご近所ヒーロー」ですが、後半は命を懸けたやり取りになっていくあたり、結構似ています。シーンでも似ているところがありました。スパイダーマンがパーティーを抜け出して現場へ走っていくシーンが、「コップ・カー」でケビン・ベーコンがランニングで全力疾走しているシーンと被って、笑えてきました。
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今作は学園ドラマとして観ても面白いと思います。非常に多様な人種の人間がいる学校は観ていて新鮮でしたし、現代的だと思います。
また、同時に、本作は非常に「庶民的」な内容だとも思います。敵のヴァルチャーの目的は「家族を守りたい」ですし、アベンジャーズどころか、トニー・スタークにさえビビっています。しかも、悪の道に走った動機が「大企業に仕事を奪われたから」というのも、現代の社会を反映していると思います。
しかし、終盤の決断で、アレは彼の勝手な正義感であって、それによって傷つく人がいることの葛藤がないのはどうなんだとは思いました。まぁ、自身の正義で傷つく人がいることに気付き、成長したと思えばいいのかな。
このように、現代のアメリカを背景に学園ドラマを展開しつつ、1人の少年が「ヒーロー」になるまでを描いた良い「オリジン」だったと思います。
父親代わりのトニー/アイアンマンのオリジン。
正式にアベンジャーズ入り。