暇人の感想日記

映画、アニメ、本などの感想をつらつらと書くブログです。更新は不定期です。

新作映画(2018年)

現実か夢か【寝ても覚めても】感想

86点 『万引き家族』とともにカンヌ国際映画祭に出品されたものの、話題は完全にパルム・ドールを受賞した『万引き家族』に持ってかれた感がある本作。ですが、曲がりなりにもカンヌに出品された作品。観たくなるのは人情というものです。なので、『きみの…

時代に抗えという監督の熱が伝わってくる作品【菊とギロチン】感想

90点 『64-ロクヨンー』『有罪』など、近年、大規模公開作品でスマッシュ・ヒットを連発している瀬々敬久監督。彼が構想30年を費やし、クラウドファンディングなどを駆使してようやく制作までこぎつけた本作。最初はそこまで観る気が無かったのですが…

『I.W』の後に丁度いいライトな作品【アントマン&ワスプ】感想

78点 MCUの前作『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー(以後、『I.W』)』は大変な作品でした。見事な交通整理力によって、膨大な数のヒーローが出ているにも関わらず、その全員に見せ場がある理想的なお祭り映画なのもそうですが、やはりラストシーン…

『透明人間』は素晴らしい!でもポノックはこのままでいいのかな?【ちいさな英雄 カニとタマゴと透明人間】感想

60点 スタジオジブリから独立した西村義明Pと米林宏昌監督が設立したスタジオポノック。2作目の公開作品。前作『メアリと魔女の花』は「魔法」をジブリに例え、「魔法なんていらない!」と言ってジブリからの決別を図った内容になっていたと思います。し…

チーム全員最高にカッコいい【オーシャンズ8】感想

72点 ジョージ・クルーニー主演の『オーシャンズ』シリーズ最新作。前作は男性役者オールスターでしたが、本作はようやく出てきた女性オールスター。私自身は『オーシャンズ』シリーズは1作目しか観たことがないニワカなので、本作を観ようか迷っていたの…

「世界一優しい場所」それは映画館にあった【劇場版 のんのんびより ばけーしょん】感想

85点 にゃんぱす~ 『のんのんびより』まさかの映画化。すごいんな~。ド田舎に住む4人の女の子(+男子1人)を主人公に、彼女たちののんびりとした日常を描いた癒しの作品。正直、こういった日常系作品をTVアニメから「映画」にする場合、アクションと…

家族の物語。泣きました。【バオ】感想

80点 『インクレディブル・ファミリー』と同時上映の短編。こちらは簡単に感想を書きます。本作も同時上映作品と同じく、「家族」の話でした。 最初は動く肉まんを通した不思議な生活が描かれます。最初はファンタジーか何かと思っていましたが、観ていく…

「個人の正義」から今の日本社会の問題をあぶりだしたエンターテイメント【検察側の罪人】感想

94点 はじめに 木村拓哉と二宮和也の二大スターの競演が話題の本作。「ジャニーズの2人が主演」ということで、「アイドルムービーなのでは?」と、どことなく敬遠される気がする本作ですが、木村拓哉と二宮和也の2人のそれぞれ正反対の素質を持った「役…

素晴らしいジュブナイル映画【ペンギン・ハイウェイ】感想

80点 『フミコの告白』『陽なたのアオシグレ』の石田祐康監督。彼の初長篇監督作。この情報を知ったとき、とても嬉しく思ったことを覚えています。彼のことは昔から知っていて、「いつ長篇作るのかなぁ」と思っていたので。なので、応援の意味を込めてムビ…

どうしようもない自分との葛藤【タイニー・ファニチャー】感想

94点 アトロクにて存在を知り、自分の経験的に観ておかなければならない作品な気がした作品。中々上映されなかったのですけど、先日、遂に渋谷で上映されたので、鑑賞しました。突き刺さりました。 本作は海外TVドラマシリーズ『Girls/ガールズ』の制作者…

アメリカの問題をミステリー仕立てで描いた秀作【ウインド・リバー】感想

90点 『ボーダーライン』『最後の追跡』に続く、テイラー・シェリダンの「フロンティア三部作」の最終作。恥ずかしいことに、実はこの2作は未見です。極寒の地、「ウィンド・リバー」で繰り広げられる、現代の西部劇。事実を基にしたストーリーで、事件を…

滑稽だけど背筋が寒くなる映画【スターリンの葬送狂騒曲】感想

75点 スターリンが死んだことに端を発する、側近達の権力闘争をコミカルに描いた喜劇。最初は笑いながら観ていられるのですが、ストーリーが進んでいくにつれて、だんだんと物事の本質が見えてきて、最終的にはちょっと背筋が寒くなる作品でした。 喜劇と…

白昼夢のような映画【ビューティフル・デイ】感想

85点 映画館の予告編に惹かれ鑑賞。初のリン・ラムジーです。実際に鑑賞する前は『レオン』のような窮地にいる少女を凄腕の捜索人である男が助け、交流を深めていくというような話だと思っていました。しかし、実際に観てみると、確かにその面はあるものの…

映画はアクションやってなんぼだろ!ストーリー!?知るか!そんなもの!!【ミッション・インポッシブル/フォールアウト】感想

80点 トム・クルーズが撮影中に足を複雑骨折したことで話題になった『ミッション・インポッシブル』シリーズ最新作。私はこれまでこのシリーズは観たことがなかったのですが、いい機会なので前作を観てから鑑賞しました。 映画というのは不思議なものです…

前作と比べ、監督の個性がいい意味で薄れた娯楽作【インクレディブル・ファミリー】感想

82点 アクの強い人格でありながら、その天才的な手腕で名作、良作を生み出しているブラッド・バード監督。彼の最新作は、何と14年前の監督作『Mr.インクレディブル』の続篇でした。前作はヒーロー映画を中年の危機を交えつつ完璧に作り、尚且つ自身の作…

彼女が戦っていたのは、男性優位社会そのもの【バトル・オブ・ザ・セクシーズ】感想

77点 鑑賞する前は、あらすじと予告から「差別的な発言を繰り返すテニス選手を、女性が倒す」という単純な構図の作品だと思っていました。しかし、実際に観てみるとそんな単純な映画ではなく、主人公が戦っていたのは、1人の男性選手ではなく、「男性社会…

2作目として文句無しの出来【ジュラシック・ワールド/炎の王国】感想

81点 現在、世界はもちろん、日本でも大ヒット中の本作。私は、前作は劇場で観なかったのですが、本作は観ました。形態はもちろんIMAX3D字幕。このために前作をレンタルして予習までしました。 これが前作の感想です。 inosuken.hatenablog.com 実際に観…

豊饒な画面で紡がれる、男女のパワー・ゲーム【ファントム・スレッド】感想

95点 初、ポール・トーマス・アンダーソン。予告やあらすじからはサイコ・スリラーな印象を受けた本作ですが、観てみるとそんなことはなく、ストレートな夫婦関係の物語であり、同時に今の世界的な潮流を含ませた作品でした。個人的には傑作認定です。 本…

監督の妄想が炸裂したとても変な作品【未来のミライ】感想

50点 はじめに 『バケモノの子』以来、実に3年ぶりとなる細田守最新作。予告からは、甘えん坊のくんちゃんが、未来からやってきたミライちゃんと共に時空を超えた旅をして成長する話という印象を受けました。しかし、実際に観てみると、その内容は細田守…

映画は凄い!と思わせられる傑作!!【カメラを止めるな!】感想 ※ネタバレあり

97点 はじめに 本作を知ったのは、町山智浩さんの「アメリカ流れ者」でした。そこで彼が絶賛していたので、興味を持っていました。この時点では「時間があったら観るか」程度の興味でした。ですが、公開されてみたら評判が評判を呼び、劇場は毎回満席御礼…

良い所もあるけど、「答え合わせ」しかないストーリーが残念【ハン・ソロ/スターウォーズ・ストーリー】感想

56点 はじめに 『スター・ウォーズ』シリーズのスピン・オフ第2弾。今回の主人公は本編の中でも屈指の人気を誇るハン・ソロ。主要キャラが一切出なかった『ローグワン』の成功を考えれば、今回の成功は半ば約束されたような気がしていましたが、監督の交…

スタッフが「いい!カッコいい!」と思っているものだけでできた快作【ニンジャバットマン】感想

79点 ・はじめに 「スーパーマン」と並んでアメコミの代名詞的な存在であるバットマン。本作はそのアニメ化作品になります。注目すべきは本作はアメリカが制作したものではなく、ほぼ100%日本が制作した、日本産バットマンだということです。制作は『…

体感時間は5分。傑作映画の完全版!本作をさらに称えよ!【バーフバリ 王の凱旋 《完全版【オリジナル・テルグ語完全版】》】感想

95点 ・はじめに 願いは叶う。王を称えよ、仕掛け人を称えよ、監督を称えよ、そしてこの映画を称えよ。 バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ! 全マヒシュマティ国民待望の『完全版』。私も上映決定の情報を知った時から大変楽しみにしていま…

普遍的な成長物語であり、フィクションが持っている力を再確認できる映画【ブリグズビー・ベア】感想

74点 ・はじめに 最初は観る気が全くなかった作品。しかし、日曜日に用事が終わった後に『バーフバリ 王の凱旋 完全版』を観ようと思っていたのに、用事が長引いて時間的に観に行けず、それなら『焼肉ドラゴン』でも観るかと思ったのですが、何とこちらも…

等身大の18歳を映し出した、とても愛おしい青春映画【レディ・バード】感想

93点 ・はじめに 近年、やたら多くなっている印象の「イタい女の子」映画。昨年は、主だった作品では『スウィート17モンスター』や『勝手にふるえてろ』が公開されました。前者は恥ずかしながら未見なのですが、後者は素晴らしい作品でした。本作もその…

不確かな世界の中で、確かに「本物」と言えたもの【万引き家族】感想

98点 ・はじめに 是枝裕和監督最新作。公開直前にカンヌ国際映画祭最高賞パルム・ドール賞を受賞したことで話題となりました。また、日本人監督として21年ぶりの快挙であることから、この手のアート作品としては2週連続興行収入第1位という異例の大ヒ…

笑いあり、涙あり、友情あり、メッセージありの超1級の娯楽作。【犬ヶ島】感想

88点 はじめに ウェス・アンダーソン監督が、日本への愛を存分に詰め込んだストップ・モーションアニメ。設定からすると大変奇抜な映画かと思うかもしれませんが、その実、内容は笑いあり、涙あり、友情ありの王道の活劇であり、同時に非常に政治的な内容…

デッドプールだからできる、極めて真っ当なヒーロー映画。いやマジで。【デッドプール2】感想

90点 2016年に公開され、大ヒットした『デッドプール』の続篇。前作は「型破りヒーロー」を謳い、メタ発言、パロディ、下ネタ、グロ何でもありな非常に自由な作品でした。ですが、前作はそれらの要素が絶妙なバランスで配され、結果、MCUもびっくりの…

一瞬しかない青春のきらめきを切り取った、宝石のように美しい作品【君の名前で僕を呼んで】感想

78点 今年のアカデミー賞で脚色賞を受賞した作品。題材的にあまり興味がなかったですが、時間的に観れると考えたので、『犬ヶ島』とはしごしてきました。 とても美しい映画でした。夏のイタリアの美しい景色、照らす太陽の光、そして登場人物たちの裸体。…

資本主義というシステムの中で戦う母親【ゲティ家の身代金】感想

88点 スキャンダル続きだったハリウッドの中で、おそらく最もスキャンダラスだった作品。公開まで1カ月半しかない時期に、主演のケヴィン・スペイシーがセクハラ問題で降板し、急遽クリストファー・プラマーを代役に9日間で22ショットを撮り直したので…